「聖なる骨」と呼ばれる仙骨について
仙骨は骨盤の真ん中にある逆三角形の骨ですが、
実は仙骨は「聖なる骨」と呼ばれることが多いです。
それは何故でしょうか?
語源から見る「聖なる骨」、仙骨
日本では「仙人の骨」と書いて仙骨ですし、
また昔は英語で’Holy Bone”(聖なる骨)と言われていたり、今現在においても”sacrum” (神聖な骨)と呼ばれています。
他にもドイツ語や、古代エジプトにおいても、神聖な呼び方をされており、
ユダヤ人の間では仙骨は死後に最後まで腐敗せずに残る部位であり、復活の際には仙骨から肉体が発生するなどの伝説があるくらいです。
また伝統的な養生法として仙骨を温めることを重要視されています。
これはエネルギーの流れを促進したり、生殖器系の健康をサポートする手段や、特に女性の冷え予防や月経前後の体調を安定させる手段としても有名です。
とにかく、仙骨は
“聖なる骨である”
ということがお分かりいただけたでしょうか。
仙骨は歪む?呼吸する?
オステオパシー施術や頭蓋仙骨療法においても仙骨は重要視されています。
頭蓋骨と連動して仙骨も前後に動くからです。
その動きによって、頭蓋仙骨リズム(第一次呼吸システム)を整えて、脳脊髄液の循環を正常化させます。
つまり、仙骨の動きが悪くなると、脳脊髄液の巡りが阻害されて、正常なホメオスタシス(恒常性維持) に悪影響を及ぼします。
ホメオスタシスが崩れると風邪をひきやすくなったり、
偏頭痛に悩まされたり、
疲れがなかなか取れず不眠症やめまいなどに苦しむ可能性が増えます。
この仙骨は第5腰椎と両側の寛骨が隣接しており、
寛骨との間にある関節を仙腸関節といいます。
この仙腸関節が特に重要となっている関節なのですが、
この仙腸関節をまたいでいる筋肉は存在せず、
靭帯などの結合組織で接合されています。
そして、仙骨の異常は主に背骨の歪みや、姿勢の悪さからくる不均衡な荷重が起因することが多くなってます。
日ごろの姿勢の癖や歩き方の癖で、仙骨の歪みが起きてしまうということです。
いろいろ書きましたが、何が言いたいかというと、、
この「聖なる骨」である仙骨の歪みというのは、
どこかの筋肉を揉んだりほぐしたりしたら元に戻るというものではなく、
歪むとクセになりやすく、矯正の仕方もちょっと特殊であるということです。
当院においても、あまりに大きな歪みや特徴的な不調が出ている場合は、
補完的に仙骨に集中した施術を行うこともあります。
実際には仙骨は頭蓋仙骨リズムの前後の動きのみならず、様々な回転軸に沿って動くことがあります。
この仙骨の回転軸と動きの方向、力学的なメカニズムは正確な施術をする上でかなり重要なのですが、
ここで全てを書くと自分でも目眩がしてきそうなので割愛します。
仙骨を施術する意味
代表的な仙骨の歪みの種類としては、
・左右どちらかが屈曲している状態(片側屈曲)
・ねじれた状態(捻転病変)
・仙骨の骨内病変
などがあります。
その中でも特に多くみられるのが、
仙骨が左側にねじれた状態である左捻転病変、
一説にはこの捻れパターンは日本を含む北半球の人々に多いとされています。
また、仙骨の左側が屈曲した状態である左片側屈曲病変、などがあります。
「片側屈曲病変だから、〇〇という症状が出る」
「左にねじれているから、〇〇という部分が痛む」
といったような特定の歪みが、特定の症状に直結するものではありません。
仙骨を含めた、あらゆる骨や靭帯の歪みや動きの異常を解消することで結果的に様々な症状の軽減及び消失につながっていきます。
当然仙骨は骨盤の一部なので、骨盤内の臓器に大きく影響を及ぼす事は多いです。
例えば、頭蓋仙骨療法のプロトコールでも重要なステップとなる骨盤隔膜という部分があります。
一般的には、骨盤底筋群の名前で知られている部分です。
この骨盤隔膜が固かったり、逆にゆるく不安定だったりすると、切迫性尿失禁や尿漏れなどの膀胱の不調、その他排泄の問題等につながりやすいです。
骨盤隔膜は仙骨に歪みがあると、そこだけ施術したりストレッチしても改善が難しい場合があります。
これに加えて仙骨と子宮をつなぐ靭帯組織も存在するので月経困難、
また卵巣に関連する症状として、女性ホルモン(主に卵胞ホルモン:エストロゲン)低下によるイライラや気分の不安定、不妊症とも関連してきます。
仙骨はメンタルにも関連する?
また仙骨(の部分)にはメンタル的な不調を解決する上でキーポイントとなる副交感神経が存在しています。
これは膀胱や子宮、卵巣、大腸などの働きを制御し、臓器に血液を供給する働きを担っています。
仙骨に歪みが生じて、血流や神経が圧迫されることにより、この大切な副交感神経の働きに支障が生じます。
骨盤内臓器に関連する症状のみでなく、頭痛などにも影響を及ぼします。
仙骨自体の動きが悪くなることで、硬膜を通じて首の骨や頭蓋骨の動きにも障害となってしまいます。
これにより自律神経にネガティブな影響を与え頭痛やめまい、落ち着かない、不眠症などにつながる恐れがあります。
結局歪みが強ければ、仙骨自体を矯正した方が良いですが、
仙骨を温めるだけでも、血流改善や副交感神経の活性化、冷えの改善につながるので、メンタル的な不調の改善も期待できます。