小児に対する頭蓋仙骨療法 ハンガリー講師による国際セミナーを受けて

先日、頭蓋線骨療法の国際セミナーに参加してきました。

 

今回の国際セミナーの内容は、9歳未満の小児に対する頭蓋仙骨療法についてです。

 

ハンガリーから来日されたオルシー・ガブリエル(Orsolya Gábriel)氏が講師で、普段はハンガリーでCP(脳性麻痺)の小児の治療を専門としているクレニオセイクラルセラピストです。

 

セミナーでは、実際に小児の患者さんに参加していただき、治療のデモや参加者が実際に施術をする実技、またご家族を交えた関わり方など
非常に有益な内容でした。

 

セミナーの内容を、全てまとめるのはかなり時間がかかるので、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉症スペクトラム症)のお子様の感覚統合・反射統合の視点から見る改善メカニズムについて少しまとめていこうと思います。

 

これは私の備忘録でもあります。

 

今回のセミナーは録音禁止のセミナーだったので、大量の情報を即座に手書きで記録することがかなり苦手な私にとってある意味で集中力を高める四日間の修行にもなりました…。

 

はじめに ADHD、ASDとは

ADHD(注意欠陥・多動症)やアスペルガー症候群(ASD)を抱える子どもたちは、

 

日常生活の中で「落ち着きがない」「感情のコントロールが難しい」「感覚に過敏または鈍感」といった課題を抱えることが少なくありません。

 

これらの背景には、感覚統合の未成熟や原始反射の残存が関係しているケースが多く見られます。

 

感覚統合とは?原始反射とは? それができないと何がいけないのか?

 

子どもが環境にうまく適応できない背景には、「感覚統合」と「原始反射の統合」がうまく進んでいないことが関係している場合があります。

 

まず「感覚統合」とは、目で見た情報(視覚)、耳で聞いた音(聴覚)、肌で感じる刺激(触覚)、

体のバランスや動きを感じる力(前庭感覚や固有感覚)など、複数の感覚情報を脳の中で整理し、必要な行動につなげる力のことです。

 

たとえば、教室で先生の話を聞きながら、椅子に座って姿勢を保ち、ノートを取るといった行動には、感覚統合の力が必要です。

 

しかしこの力が未成熟だと、感覚刺激に過剰に反応してしまったり、逆に反応が鈍くなったりします。

その結果、集中力が続かなかったり、体の動きがぎこちなくなったりして、多動や不注意、感情の爆発などの行動につながることがあります。

 

 

次に「原始反射の統合」とは、生まれたばかりの赤ちゃんに見られる自動的な反応(モロー反射やATNRなど)が、成長とともに自然に消えていく過程のことです。

 

これらの反射は、発達の初期段階では必要なものですが、ある程度の年齢になると脳の高次機能が発達し、反射は統合されていきます。

 

ところが、発達に課題のある子どもでは、これらの反射がうまく統合されずに残ってしまうことがあります。

 

私が作業療法士として、病院や施設で勤務していた時代にボバース法という一つの流派を勉強していました。

まさにボバースの目標もこの感覚統合だったり原始反射の統合だったりします。

 

ただ、アプローチの仕方は全然違います(今はリハビリ業界から長らく離れて全く事情を知りませんが)。

話を戻します。

 

残存した原始反射は、姿勢を保つことや視線を安定させること、

 

感情をコントロールすることなどに影響を与え、学習や友達との関わりに困難をもたらす原因となることがあります。

 

頭蓋仙骨療法が有効とされる理由

頭蓋仙骨療法は、小児の神経系の安定や感覚統合の促進に役立つと考えられています。

 

この療法では、頭蓋骨と仙骨のわずかな動きを調整することで、脳と脊髄を包む硬膜の緊張を緩め、脳脊髄液の流れを整えることができます。

 

特に難産で出産された場合などは、小児のうちから頭の形を整えておくことは、その後の発達過程を正常に導くという神経生理学的意義があると考えられています。

この施術により脳脊髄液の循環が改善されると、中枢神経系の過敏な状態が落ち着き、外部からの感覚刺激に対する反応が穏やかになります。

 

これは、感覚統合の土台を整える重要な働きです。

 

また、施術は非常に優しいタッチで行われるため、副交感神経が活性化され、心身がリラックスした状態になります。

 

このリラックス状態は睡眠の質を高め、神経系の可塑性(適応力)を促進します。

 

結果として、感覚統合や原始反射の統合が進みやすい環境が整います。

 

さらに、頭蓋仙骨療法は脳幹や小脳といった、原始反射の統合に関わる重要な部位に間接的に働きかけることができます。

これにより、残存している原始反射の整理や統合が促され、発達のスムーズな進行を支える可能性があります。

実際に施術を受けた後に、

 

「子供があんな風に人の気持ちを考える行動を取ったのは初めてです」

「いつも寝かしつけるのが大変だったのですが、昨日は10分もしないうちに寝ちゃいました」

 

と施術を受けたお子様のお母様から連絡をいただくことがあります。

 

これは単純に

“本人が対人関係や生活習慣への意識が向上した”

というわけではなく、その子の脳幹の働きが変化したとも解釈できます。

むしろ頭蓋仙骨療法による考察であれば、その視点で見ていきます。

 

 発達障害の子どもが避けるべき生活習慣

発達障害の子どもたちは、感覚統合や反射統合が不十分であるがゆえに神経系が過敏または未成熟であることが多く、

 

日常の些細な刺激でも感覚の混乱や情緒の不安定さを引き起こすことがあります。

 

子どもの感覚統合や反射統合の発達には、日常の生活習慣が大きく影響します。特に現代的な環境や行動パターンの中には、これらの発達を妨げる要因が潜んでいます。

 

①スマートフォンやタブレットの使用

まず、スマートフォンやタブレットを長時間使用する習慣は注意が必要です。

 

オルシ先生は特にここを厳しくしめるように言われていました。

なので、4日間のセミナー中は、難しい単語の用語検索も含めてスマホの使用は禁止でした。

 

これらのデバイスから発せられる強い光(特にブルーライト)や、画面上の高速な視覚情報は、視覚に偏った感覚刺激を過剰に与えます。その結果、脳が常に興奮状態となり、リラックスを司る副交感神経の働きが抑えられてしまいます。

 

これが睡眠障害や情緒の不安定さにつながり、さらに視線の固定や姿勢保持に関わる反射(たとえばATNR)が過剰に刺激され、統合が進みにくくなる可能性があります。

 

②騒音、人混み、強い刺激

また、騒音や人混み、点滅する光など刺激の強い環境も、感覚統合にとっては負荷となります。

 

聴覚・視覚・触覚など複数の感覚が同時に過剰に刺激されることで、脳の処理能力が追いつかず、パニックや多動、過敏な反応が出やすくなります。

 

こうした状態では、情緒の安定や集中力の維持が難しくなり、驚き反射(モロー反射)が頻繁に誘発されて残存しやすくなる傾向があります。

 

③明るすぎる部屋の照明

さらに、明るすぎる照明や画面も注意が必要です。

 

強い光刺激は視覚系の過敏性を高めるだけでなく、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまいます。

 

これにより睡眠の質が低下し、神経系の回復が妨げられます。

 

睡眠中には反射統合が進む重要なプロセスがあるため、睡眠不足は統合の遅れにつながる可能性があります。

 

④長時間同じ姿勢をとること

最後に、長時間同じ姿勢で過ごすことも感覚統合には不利です。

たとえば椅子に座りっぱなしの状態では、体を動かす機会が減り、前庭感覚(バランス感覚)や固有感覚(身体の位置や動きに関する感覚)が十分に育ちません。

これにより、姿勢を保つ力や運動のコントロールに課題が残りやすくなり、動きによって統合される反射(ガラント反射など)が残存しやすくなると考えられます。

 

【推奨される生活習慣の方向性】

• 穏やかな照明と静かな環境で過ごす時間を増やす

• スクリーンタイムを制限し、自然の中での遊びや運動を取り入れる

• 睡眠の質を高めるためのルーティン(入眠儀式)を整える

• 感覚統合を促す遊び(バランス遊び、リズム運動、触覚刺激)を日常に組み込む

↑ここはまた後に1つの記事にしたいと思います。

 

 

おわりに

頭蓋仙骨療法は、発達障害の子どもたちに対して、神経系の調整を通じた感覚・反射の統合支援という新たな可能性を生み出しています。

 

私の施術では、頭蓋仙骨療法に加え、なるべくソフトなオステオパシーの手技を取り入れた施術を行っております。

 

その中でも特に、頭蓋仙骨療法は安全に導入できて、お子様にとっても心地よく、施術を重ねるたびにお子様の口数がどんどん増えていったり、私に対して心を開いてくれる瞬間がたくさんあります。

 

これは私にとってお金に変えられない価値であり、治療家をしていていちばん嬉しい瞬間でもあります。

 

【オルシー先生と】

 

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