歩くだけで自律神経を整えるウォーキングの力

歩くことと自律神経の関連について

近年、歩くことの重要性が再評価されています。

健康意識の高い方の中には、整体を受けるだけでなく、ウォーキングを習慣に取り入れている人も多くいます。

これは、体型や健康を維持すること、さらには心の健康を整えることを目的としている場合が多いでしょう。

施術の際に「何か続けたほうが良い習慣はありますか?」と質問されることがあります。

その際、ウォーキングを提案することもあります。

それは単に健康に良いからという理由だけではありません。

歩くことには、自律神経を整え、気分を落ち着かせる効果がありますが、それ以上に大きなメリットがあります(頭蓋仙骨療法との関連も後述します)。

特にこの10年ほどで歩行に関する研究論文が多数発表され、脳の機能との関連性について多くのことが解明されました。

 

アメリカの人類学者ジェレミー・デシルヴァは自身の著書で、

> 「歩行は脳の機能を変化させる。それは創造性だけでなく、記憶力にも影響を与える」

と述べています。

さらに、多くの研究者が歩行と脳の関係について興味深い研究結果を発表しています。

特に注目されているのは、記憶や学習を司る海馬の部分です。

 

 

海馬と歩行の関係

海馬は、肉眼で見るとギリシャ神話に登場する海神ポセイドンの形に似ていることから名付けられたと言われています。

通常、海馬は加齢とともに小さくなる傾向があり、そのペースは年間1~2%程度とされています。そのため、「あの俳優さんの名前なんだっけ?」と記憶が曖昧になる機会が増えるのも納得できます。

 

この海馬に関する研究ですが、2011年にアメリカのイリノイ大学などの研究チームが発表した論文によると、55歳から80歳までの120人の高齢者を対象に、1年間ウォーキングを行ったグループとストレッチを行ったグループの効果を比較しました。

 

その結果、ウォーキンググループでは海馬の体積が約2%増加し、ストレッチグループでは1.4%縮小していました。つまり、ウォーキングには脳を最大で約2年若返らせる効果がある可能性が示されたのです。

 

自律神経と海馬の関係

海馬は記憶や学習機能だけでなく、近年では感情を司る役割も持つことが分かってきています。

感情が不安定になると自律神経も乱れ、その結果、自律神経の乱れが感情をさらに不安定にするという悪循環が生じます。

特にストレスホルモン(コルチゾール)は海馬にダメージを与え、神経新生を抑制することが報告されています。

慢性的なストレスが続くと交感神経が過剰に働き、副交感神経とのバランスが崩れ、結果としてコルチゾールの分泌が増加します。

その影響で海馬の神経細胞が損傷し、萎縮が進む可能性があるのです。

これがうつ病や記憶障害の一因になることも指摘されています。

一方で、適度な運動や瞑想、深呼吸などのリラックス法を取り入れることで、副交感神経が活性化し、コルチゾールの影響を軽減できると考えられています。

 

歩行と創造性の関係

近年、歩行は脳の健康を保つだけでなく、創造性を高める作用があることも注目されています。

スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグなどの著名な起業家は「ウォーキングミーティング」を習慣にしていました。

ジョブズは、アイデアを膨らませるために屋外を歩きながら会話をすることを好んでいたと伝えられています。

また、スタンフォード大学の研究によると、歩行中の思考は座っている状態よりも創造的であることが証明されています。

歩くことで脳が活性化し、新しいアイデアが生まれやすくなるのです。特に、自然の中を歩くことでストレスが軽減され、創造力が向上する可能性も示唆されています。

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日常生活で歩行を活かす方法

それでは、歩行を生活に取り入れるにはどうすればよいでしょうか?

以下の方法で、無理なく歩く習慣を作ることができます。

1. 通勤や買い物で歩く距離を増やす

車や公共交通機関を使う代わりに、意識的に歩く時間を増やすことで、体と脳の健康に良い影響を与えます。

2. 公園や自然の中で散歩する

都市の喧騒から離れ、自然の中を歩くことで、リラックス効果がより高まります。

3. 昼休みや仕事の合間に短時間の散歩をする

長時間座っていると脳が疲れやすくなります。

短時間でも歩くことで集中力を回復させ、仕事の効率を向上させることができます。

 

※ジムのルームランナーで歩く事は?との疑問が浮かぶと思います。
残念ながらルームランナーでは脳の創造性とリラックスの効果は屋外歩行ほどは得られなくなってしまいます。
だから外を歩くこと、できれば自然の中を歩くことをお勧めします。

 

歩行は生命のリズムを安定させる

歩くことは、頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル・セラピー)で得られた体のリズムを維持するのに良い影響を与える可能性があります。

頭蓋仙骨療法は、脳脊髄液の循環を促し、体の自然なリズム(クラニオセイクラル・リズム)を調整することを目的としています。

 

一方、歩行は全身の血流を促し、神経系のバランスを整える効果があります。

特に、リズミカルな歩行は副交感神経を活性化させ、深いリラクゼーションをもたらすことが知られています。

また、歩くことによって骨盤の動きが適切に維持されると、脊柱や頭蓋骨の微細な動きにも良い影響を及ぼし、クラニオセイクラル・リズムを安定させる助けになる可能性があります。

 

特に、ゆったりとしたウォーキングや自然の中で歩くことは、体の調和を保つのに効果的でしょう。

 

ただ、頭蓋仙骨療法の効果を長期間維持するには、歩行だけではなく、適切な姿勢、呼吸法、ストレス管理なども大切です。

まとめ

歩行は健康を維持するだけでなく、脳の機能を向上させ、自律神経を整える力を持っています。

また、創造性を高める効果もあり、著名な起業家が実践していたように、新しいアイデアを生み出すのにも役立ちます。

日常生活で歩く機会を増やすことで、心身ともに充実した生活を送ることができるでしょう。

 

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