扁平足が自律神経を乱す?土踏まずが整うとカラダも整う理由
足の形は一見自律神経とは全く関係なさそうですが、実は自律神経と深く関わっています。
それは足底腱膜(足の裏)、土踏まず、足首などの柔軟性が、全身の姿勢制御と脳へのインプットと大きく関連しているからです。
そもそも土踏まず(アーチ構造)は何のためにある?
「土踏まず」はただの“足のくぼみ”ではなく、身体全体を支える高度なサスペンション機構です。以下に、わかりやすく解説させてください。
なぜ「土踏まず」があるのか?──その本質的な役割
土踏まずは、足の骨・靱帯・筋肉で構成されたアーチ構造で、歩行やランニング中の衝撃を「バネ」のように吸収し、分散してくれる役目を持っています。
つまり、
• 地面に足が着くたびに発生する衝撃(自分の体重以上)を、
• 瞬時にしなやかに受け止め、体の上部に伝えないようにしてくれているんです。
例えるなら、“クッション性の高い橋脚”のような役目ですね。
土踏まずがもたらす身体への好影響
① 膝・股関節・腰への衝撃軽減
→ 着地時の力を吸収することで、これらの関節が痛みや摩耗から守られる。
②姿勢バランスの維持
→ 足の裏から全身の重心ラインが整いやすくなり、猫背・反り腰などの姿勢不良も防ぎやすい。
③歩行と走行の効率化
→ 地面を蹴る際に土踏まずの“しなり”が使えることで、推進力が増し、エネルギー効率もアップ。
④自律神経への影響
→ 土踏まずのセンサーが働くことで、足裏から脳への感覚入力が増え、副交感神経が刺激されやすくなる=リラックスしやすい身体環境を支える。
【補足、マニアックな話なので読んでも読まなくてもOK!】
土踏まず(アーチ)には多くの機械受容器(レセプター)が存在していて、姿勢のバランス調整や歩行制御に関わるセンサーとして機能しています。
この領域が適切に刺激されると、足底からの感覚入力が中枢神経系に伝わり、身体の安定性や安心感に寄与することがあります。
特に、副交感神経系の活性化により「リラックスしやすい身体状態」が生まれるという仮説には、一定の神経生理学的な裏付けがあります。
たとえば:
• 足裏への心地よい刺激が、迷走神経の活動を介して副交感神経の優位状態を導くケース
• 裸足歩行やアーチをしっかり使った歩行によって、身体のセンシング(内受容感覚)が高まり、自律神経バランスが整うという報告
ただし、「直接的に土踏まずが副交感神経を刺激する」というよりも、「感覚入力の増加 → 中枢神経の調整 → 副交感神経の活性化」という連続性のあるメカニズムが存在すると捉えるのが正確です。
もし、これを日常のセルフケアや運動に取り入れたいのであれば、足指を動かすエクササイズや、足裏を優しく刺激するグッズなども効果的です。
現代人はなぜ偏平足になる?
扁平足になるのは様々な要因があります。先天的なものと、後天的なものがありますが、ここでは後天的なもののみ説明します。
① 筋力低下:
特に足裏の筋肉(後脛骨筋など)が弱くなると、アーチを支えきれなくなります 。
運動不足だったり、クッション性の高い靴に慣れすぎると、足裏の筋肉を十分に使う機会が減り、足のアーチ構造の崩壊から偏平足になります。
②靴の形状:
本来、アーチ構造(土踏まず)形成には、歩行の際に足の親指が適切に使われる必要がありますが、靴によって足の指が動かせなくなると、その機能が十分に働きません。
③加齢:
年齢とともに靭帯や筋肉が衰え、アーチが崩れやすくなります 。加齢自体が、筋力低下、靭帯構造の衰えを引き起こす原因になるので、扁平足の要因になります。
④体重増加:
足への負荷が増え、アーチが潰れやすくなります 。アーチが潰れると、足の裏は平べったくなるので、偏平足になります。
⑤ 長時間の立ち仕事や激しい運動:
足に過度な負荷がかかると、アーチが崩れるリスクが高まり扁平足の原因になります。
偏平足を放置するとどうなるか?
偏平足とは、土踏まずが潰れて足裏が平坦になった状態です。
この状態が長期間続くと、以下の問題が生じていきます。
①足首の動きが悪くなる(可動域の低下)
本来アーチが吸収していた衝撃が吸収されず、足首まわりの筋肉や靭帯に過度なストレスがかかります。
②膝・股関節・腰への負担が増える
足が柔軟に衝撃をいなせないため、関節が代償的に働きます。特に膝内側の痛みや股関節まわりの不調が多くなり、腰椎にも波及します。
③姿勢が歪み、疲労や自律神経に影響する
身体のバランスが崩れ、無意識に筋肉を固めて立ち姿勢を維持しようとします。
それによって慢性的な肩こり、頭痛、倦怠感などが現れることもあります。
クッション性の高い快適なスニーカーも害になる?
一見すると足に優しそうな「クッション性の高いスニーカー」ですが、実は使い方や履き続け方によっては、足や身体にとってマイナスになることもあるんです。
なぜ“快適”が“害”になるのか?
クッションが厚い靴は、地面からの衝撃を吸収してくれる反面、足裏の感覚を鈍らせてしまうという側面があります。
その結果、足の筋肉やアーチを支える力が使われにくくなり、次のような影響が出てきます:
• 足の筋力低下:特に足指や足底筋が弱くなり、扁平足や外反母趾のリスクが高まる
• バランス感覚の低下:足裏からの感覚入力が減ることで、姿勢制御が不安定に
• 着地衝撃の増加:クッションに頼ってドスンと着地する癖がつき、かえって膝や股関節に負担がかかることも
どんな人にとって“害”になりやすい?
• 日常的に長時間履いている人(通勤・立ち仕事など)
• 足のアーチがすでに崩れている人(扁平足・外反母趾)
• 足裏の感覚が鈍くなっている高齢者や神経系の弱い方
じゃあ、クッション性は悪なのか?
いいえ、使い方次第で大きな味方にもなります。
たとえば、長時間の立ち仕事や硬い床での作業には、適度なクッションが足を守ってくれます。
ただし、常に“ふわふわ”に頼りきるのではなく、足本来の機能を育てる時間も必要なんです。
対策としてできること
①週に数回は裸足に近い感覚の靴で歩く(ゼロドロップやミニマルシューズ)
裸足感覚シューズメーカーのアルトラの仮説では、
本来の足の自然な形があってこそ、人間の足の中で最も大切なアーチ構造(土踏まず)が本来の機能を果たすと言われています。
特に歩く時に親指を使うことによって、足の安定性は飛躍的に向上し、自然なアーチ構造の形成を促すと考えられます。
※ただいきなり素足感覚シューズで長距離歩くと、怪我につながったり外反母趾の悪化につながることがあります!
②足指を動かすトレーニングや足裏マッサージを取り入れる
足底腱膜の機能維持につながり、アーチ構造や感覚機能の維持に貢献します。
③クッション性の高い靴でも、正しい歩き方(かかと→つま先)を意識する
実は意識するだけでも歩き方が変わってくるものです。まさに歩行瞑想にもなるので精神の安定にも寄与します。
最後に
「快適さ」は、時に“感覚の退化”と引き換えになることもあります。
だからこそ、適切な土踏まずを作つためには靴に頼るだけでなく、自分の足を育てる意識が大切なんですね。
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